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現実は単なる二度寝の夢

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うなぎの飯に妻が逆立つ


「今夜は月が明るいね」といいながら
君は指に挟んだタバコを夜空にかざして、眺めた。
タバコの先端でじゅくじゅくと灯る光と月とを見比べて
「ほら、やっぱり」とつぶいてから「月の方が明るいや」と小さな声で付け加える。

ふと君の横を風が通りぬけた。
しゅっ、という音をたててタバコの火が一瞬だけ強まる。
少しだけ驚いた表情をしたあとで、顔をマフラーにうずめた。
口もとが見えなくても、君が微笑んでいるのがわかる。

音の無い公園のベンチ。
さっきまで遊具の辺りでうろうろしていた猫もいつの間にかいなくなった。

足元に落とした吸殻を踏みつぶす君を見て僕は言う
「君は、早く大人になりたがっているね」。
少しだけこっちに目を向けたあとで
「そうかな」といいながらポケットをまさぐり始めた。
僕が「子供のまま、死にたくないんだよ。君は。」というと
「へえ、そう」と、君はまた関心がなさそうにつぶやいたあとで
すっとポケットの中から銀色のライターを取り出した。
「でもそれって、すごく子供っぽいことだと思うな」
「・・・・・」
黙ったまま、気だるそうにタバコに火をつける君は
なんだか急いでいるようにも見える。

「タバコ、やめないの?」
「やめない」
「また叱られるよ」
「うるさいなあ、生意気だぞ」
「まったく・・・少しは年上を敬えよ」
そう言って笑ったあとで、僕は少し身震いをした。

木製のベンチから冬の冷たさが伝わってくる。
僕の横で、タバコの煙か白くなった息か、静かに吐きながら
これから始まる夜に溶け込んでいくように見えた。




【11月22日】
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